ぷれす通信

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読んだら書きたくなりました vol.104

『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』

米澤?泉 幻冬舎新書

シンプルで安価な服をおしゃれに着こなすことが当たり前の時代ですが、今から30~40年前はDCブランドの服や派手なアイテムを使用し、個性的な自分を演出することが常識でした。ユニクロがここまで大きくなったきっかけは、他者との差異化というファッションの枠からはみ出し、服を「部品」として捉えたことです。部品を組み合わせる、つまり主張のないシャツやパンツを組み合わせて全体を完成させるというアイテム展開が、機能性の高さと相まってマーケットを席捲しました。本書の面白いところは、その後にユニクロが掲げた「くらし」の領域と時代の趨勢を掘り下げている点です。21世紀に入ると健康や環境に対する意識の高まりや、フェアトレードなどのエシカル(倫理・道徳)思考が広まりました。日々の「くらし」を大切にすることを一義に置く以上、差異化のための消費はいまや批判の的となり、シンプルで安価な服がコレクトネスとされるようになります。ユニクロが世界的にシェアを広げたのは、その「くらし」の視点をキャッチしたことによるというのです。「ユニクロを着たら、もうおしまいだと思っていた」という、ブランド服時代を通ってきた著者だからこそ、ユニクロが主流となった時代の移り変わりを、興味深く、驚きの目で書き記しています。ユニクロが当たり前にあった若い人も、昔のユニクロを知っている大人も、ユニクロという企業はもちろん、ファッション文化がどう変わり、人々が何を求め始めているのか等、さまざまな発見のある一冊です。(いく)

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『教養としてのロック名盤ベスト100』

川﨑大助 光文社新書

ベスト100選といった名盤の紹介本は数多ありますが、この新書のユニークなところは著者の主観ではなく、イギリスの音楽メディア「NME」(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)と、アメリカの音楽雑誌「ローリング・ストーン」のそれぞれが行った名盤ランキングを素材として、著者独自の計算方法によって順位づけを行っていることです。イギリスはビートルズを送り出して世界の音楽を変えた国であり、アメリカはロックンロールを誕生させた国です。当然、文化の違いや価値観の違いがあり、それがランキングに反映されています。一方で1位のアルバムが、もう一方ではなんと87位という違い! 1アルバムにつき1見開き、20位から1位までは2見開きで、アルバムのデータ(発売年、レーベルの所在国、曲目、ジャンル等)はもちろん、著者による解説、そして「NME」と「ローリング・ストーン」の各順位が記されています。「当たり前にこのアルバムは入るよね」というものから、「え、あのアルバムがないの?」という驚きが結構ありました。ちなみに掲載されているアルバムのうち、所有していたアルバムは20枚……。ロックの教養はまだまだ足りないな~と思った私でした。(もん)

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