ぷれす通信

communication

読んだら書きたくなりました vol.89

『わたしの宮沢賢治 豊穣の人』

山下聖美 ソレイユ出版

私が宮沢賢治の作品に初めてふれたのは小学生のときだったと思います。そういう方も多いのではないでしょうか。なぜなら教科書に載っていたから。「やまなし」のインパクトは十分で、今でもその一部は覚えているほどです。しかし、語感は面白いけれどよくわからない、というのが宮沢賢治作品に対する印象で特に興味を持つこともありませんでした。本書の著者は日本文学の研究者で、作品や宮沢賢治自身についてのさまざまな考察も披露されており、それが興味深いのですが、何より印象的だったのは「それぞれの解釈でよい。むしろ、各自が答えを能動的に生み出していかなければなりません。これがクリエイティブに作品を読むということです」という一節でした。試験のように、著者の言っていることを正確に読み取れることがエライような気がしていましたが、そうじゃなくてもいいんだとはっとしました。わからないものこそ考える余地があって面白い、読んでおしまいではなくさらにその先がある。宮沢賢治を通して、読書の楽しみをあらためて教えてくれました。(いく)

『薬に頼らずうつを治す方法』

藤川徳美 アチーブメント出版

タイトルにある通り、薬に頼らずにうつの症状を和らげ「完治」を目指すための本です。心の病気に対して医師が行えるのは、投薬によって症状をなくすことの「寛解」が基本で、断薬まで導くのは難しい状況だそうです。では、完治を目指すにはどうすればいいのか? それは、食事やサプリメントによる栄養面の改善にシフトして、徐々に薬から離れるというアプローチを試みることです。うつの原因を探ると、鉄分やタンパク質の不足や糖質過剰などが見られるとのこと。つまり質的な栄養不足やバランスの悪さがよくないのです。本書は、産後うつや、パニック障害とうつ、不眠とうつなどいくつかの症例ごとに分けて、減薬と食事の改善などを、マンガを挟みながらストレスなく読めるようになっています。症状に苦しんでいる方だけでなく、近しい人のつらい姿を見て何とか助けになれないか、という人にも役立つ一冊です。完治できるということがわかるだけでも、心が軽くなりますね。(てつ)