ぷれす通信

communication

読んだら書きたくなりました vol.85

『デザインが日本を変える』

前田育男 光文社新書

私、ペーパードライバーだし、縁もなにもないのですが、何を隠そうマツダの車が好きなんです。マツダの車を所有している自分を想像してみたりします。そんなわけで、常務執行役員デザイン・ブランドスタイル担当の前田さんの本を読んでみました。その名のとおり、「ブランド」を最上位概念におくことでクルマに魅力を与えるのです。日本の自動車メーカーが新興国との熾烈な量産合戦から抜け出せないのは、クルマを単なる乗り物として扱い、「文化」を築くという点にフォーカスしていなかったためだと前田さんは述べています。加速や乗り心地なども大切ではありますが、デザインなどの感性に訴える点にスポットを当てることでブランドが宿り、結果としてクルマ文化の発展につながっていく。そして、ブランドの輝きを保つためには、また過酷なまでの労力が払われる……。私のようなミーハーな気持ちからでも十分スリリングですし、デザインやブランディングを考えるうえでとても参考になる一冊です。(まち)

『するめ映画館』

吉本由美 文藝春秋

スタイリストの吉本由美さんが主催者となって、村上春樹さんや都築響一さんら映画に造詣の深いゲストと「あまりポピュラーではないけれど、噛めば噛むほど個人的に味が出る」映画について語り合います。安西水丸さんは「飛べ!フェニックス」、中野翠さんは「愛と宿命の泉」といった感じ。後半は、吉本さんと村上さん都築さん、そして和田誠さんの4人で、フィルム・ノワールやミュージカル、野球、潜水艦、さらにはニッポンのサラリーマン映画について、本当に楽しそうに話に花を咲かせます。私はこの一冊を参考に、ずいぶんとレンタルしたりDVDを購入したりしました。お正月はのんびりとあったかい部屋で過ごそうかな?と思っている方は、読むだけでもよし、気になった作品を見てみるのもよしです。よいお年をお迎えください。(てつ)