ぷれす通信

communication

読んだら書きたくなりました vol.62

『読書という荒野』

見城 徹 幻冬舎

最初に伝えておきますが、文化人が知識のひけらかしとして紹介するカタログ的読書論などを想像しては困ります。めくるページでやけどするような、組まれた文字から熱が立ちのぼってくる読書論です。いや、読書論に収まらない、まさに読書という荒野に死を賭して突き進むような、読書との格闘を記した本です。一個人が日常で経験することには限りがあります。だからこそ、時代や立場や性別など、自分とは異なる数多の人生を読書によって体験し、「自己検証・自己否定・自己嫌悪」を通して、さまざまな価値観や他者への想像力を育み、そして的確な言葉を獲得する。それが読書による力であると説いています。本を紹介するからには、「なぜそのタイトルを取り上げるのか」という理由があるものです。その裏付けとして、重く苦い少年時代の記憶や、学生運動を貫き通せなかった挫折といったことを赤裸々にしています。圧倒的努力で勝ち取った文芸編集者への道と、それに続く編集者としての病いの数々。その裏付けがあるからこそ、紹介される本の奥深さや凄みといったものがしっかりとわれわれ読者に伝わるのです。さらに読書について知るだけでなく、読書体験によって正確な言葉を知り、深い思考力で人生を強烈に動かしている見城徹という一人の人間の真実をも知ることができる仕組みになっています。紹介されたタイトルについてここでの言及は避けます。ぜひページを手繰って強烈な熱を感じ取ってください。(かつ)

『SNOOPYの刺繍 君といつも一緒に』

チャールズ・M・シュルツ KADOKAWA

チャーリー・ブラウンに抱きつくスヌーピー、おもちゃのピアノ越しのルーシーとシュローダー、カボチャ畑のスヌーピーとライナス、授業を受けるペパーミント・パティとマーシーなど、スヌーピーと個性豊かな仲間たちがたくさん掲載された刺繍図案帳です。かわいらしい図案の数々に、どこに刺繍するか考えるのは楽しく、ページをめくって眺めているだけでもなごみます。『ピーナッツ』のマンガのセリフまで刺繍になっているものもあり、ストーリー性が感じられるのも嬉しいポイントです。私のお気に入りは、シュローダーがルーシーにキスする珍しくてとてもかわいいワンシーン。スヌーピーだけでも、1950年代のレトロなスヌーピーから現在のスヌーピーまで多様で、チャーリー・ブラウンたちメインキャラクター以外にもスヌーピーの兄スパイクなども登場しており、見ればきっとお気に入りの図柄が見つかるはずです。(もん)