ぷれす通信

communication

2015年6月号

”校正原体験” について

出向で雑誌校正をしていた駆け出しの頃の話。横組みのゲラで、行間に沿って左側に引き出す線がどうしてもスマートに引けません。先輩方のゲラはどれもきれい。

あるとき、一番上手に線を引く先輩の手元に目を向けると、指摘箇所から左に引っぱるのではなく、余白から指摘箇所に向けて右に引いています。

そうか! そうやるのか。

さっそく試してみるとスムーズです。考えてみると、ひらがな・カタカナ・漢字とも線は左から右に引くもの。なんだか重大な発見をした気分になりました。

どうも調子が出ないなぁ……なんてとき、すうーと丁寧に引き出し線を引いてみます。指導してくれた先輩方の顔が浮かび、赤入れしたゲラを借りて、校正技術や観点をものにしようと食い入るように見つめていた自分の姿も浮かびます。

もちろん、その姿勢は今も変わりません。ベテラン校正者のスピードと鋭い指摘を目のあたりにしては驚嘆し、教えを乞い、メモをとります。

引き出し線がひよっこ時分の原体験。みなさんにも、そうした“校正原体験”はありますか?(校閲部長・山本雅範)

昼の憩いは午後の活力 ♪

日頃、あれもこれもと忙しいですから、お昼休み、1時間しっかり休めるとは限りません。そんなときに便利なのが立ち食いそばですね。で、その立ち食いそばのお店で、とっても憩えるお店があるのです。

お昼休みは食事と休憩の時間。「休憩」ですから、憩わないとね。食事をして、目と体と脳みそを休めて、そして憩うこと(心を休めるってことかな)で気分転換。これが午後の活力につながるわけです。<一般論が長い。早く立ち食いそばのこと書けよ!と野次>

そのお店で、注文してから出てくるまで、盛り付けを眺めていると、心が和み、幸せになれるのです。盛り付けを担当するのは体の大きなお兄さん。お昼時、混んで忙しい時でも、いつも微笑んでいます。そして、仕事が丁寧。

温めた麺をどんぶりに移したら、お箸でほぐす。そして2回に分けてゆっくりとおつゆを注ぐ。天ぷらそばの場合、たくさん並んだ天ぷらのなかから、何枚かをつまんでひっくり返して1枚を選ぶ(何を基準にしているのかは不明)。その天ぷらを麺の上にそーっと置く。そして、天ぷらの上におつゆをそーっとかける。  

刻みねぎの乗せ方にもこだわりが……。刻みねぎの山から少しずつ何回かに分けて取り、天ぷらに乗せます。ねぎの山の向こう側とこちら側から、まんべんなく取ります。さらに、乗せたねぎを、ちょこっと取って捨てる(これも基準が不明)。

そして、「熱いですから、お気をつけください」と言って、カウンターに乗せてくれます。

どんなに忙しくても微笑みながら丁寧な仕事をする。そして、お客さんを幸せにする。見習わなくてはと思っています。(編集部長・渡辺隆)

この1冊!『新しい国語表記ハンドブック 第七版』

この1冊!『新しい国語表記ハンドブック 第七版』

『新しい国語表記ハンドブック 第七版』

三省堂編修所編

三省堂/304ページ

ISBN-10: 4385211388

ISBN-13: 978-4385211381

価格:740円(税別)


校正者も利用する「常用漢字表」。文化庁のHPから簡単にPDFを入手できるのですが、難点は「少々使いづらい」ということです。例えば、「行」という漢字は、「ギョウ」、「いく」「おこなう」で探しても見つからず、「コウ」のところにしかありません。このように、ある漢字を探す場合に、「一つの読み」からしか探せないのです。訓読みで使われることの多い「襟」、「隙」は「キン」、「ゲキ」で引かないと見つかりません。では、「姫」は「キ」で探すのかと思いきや、「ひめ」でしか載っていないのです。

そこで、「利便性を高めるため、『常用漢字表』を音訓それぞれから引けるよう索引をつけ、そこに『音訓の小・中・高等学校段階別割り振り表』の情報を反映」させたのが、今年1月発行の『新しい国語表記ハンドブック 第七版』です。

おかげで随分使いやすくなりました。

特に便利なのが「割り振り表」です。「背」は小6で「せ・せい・ハイ」の読みで教わりますが、「そむく」と教わるのは中学校です。「憂い」と「愁い」、どちらが先に学校で習うかご存知でしょうか?「憂」が中学校、「愁」が高校で教わる漢字です。いずれもルビを振る際の目安として活用できます。

逆に「こんな字にまでルビ振らなくていいんじゃないの、読者は大人なんだから」と、校正をしていてルビを取りたくなることがあります。そんな時も小中高のどの段階で習う漢字なのか、あるいは読みなのか一目瞭然です。ほかに、「異字同訓」の漢字の使い分け例、同音異義語の使い分け、現代仮名遣い、送り仮名の付け方、敬語の指針など、四六版304ページに国語表記の基本知識がてんこ盛り。『標準 校正必携 第8版』(日本エディタースクール/2,400円 税別)と内容的にダブる部分も多いので、『必携』をお持ちでない方に特にお薦めです。

コスパ優秀!(も)