2013年5月号
デッドゾーン 季節のことば36選
先月25日、日本気象協会が「季節のことば36選」を発表しました(朝日新聞2013年4月26日朝刊より)。
どんなことばが選ばれたか見てみましょう。
1月:初詣、寒稽古、雪おろし
2月:節分、バレンタインデー、春一番
3月:ひな祭り、なごり雪、おぼろ月
4月:入学式、花吹雪、春眠
5月:風薫る、鯉のぼり、卯の花
6月:あじさい、梅雨、蛍舞う
7月:蝉しぐれ、ひまわり、入道雲、夏休み
8月:原爆忌(広島と長崎)、流れ星、朝顔
9月:いわし雲、虫の声、お月見
10月:紅葉前線、秋祭り、冬支度
11月:木枯らし1号、七五三、時雨
12月:冬将軍、クリスマス、除夜の鐘
※7月のことばが4つのため全37個
どのことばもそれぞれの月をよく表していますね。新聞によると、「今後はテレビの天気予報などでおなじみになりそうだ」とのこと。中国伝来の二十四節気と合わせて、耳にする機会が増えそうです。
「季節のことば36選」は校正者にとって必須とは限りません。しかし、ことばを扱う仕事に携わる者として、常日頃からことばに対するアンテナを張り、感覚を磨き、視野を広くもつよう心がけることが大切です。
現代日本の季節感を表した37個のことば。あなたのお気に入りはどれですか?(M)
日本気象協会
この一冊!『辞書を編む』
『辞書を編む』
飯間浩明 著
光文社新書(2013/4)
新書判/268ページ
ISBN 978-4-334-03738-3
価格 840円(税込)
今回ご紹介するのは、辞書づくりの舞台裏、改訂作業の様子を生き生きと描写した一冊です。
著者は「三省堂国語辞典」(以下「三国」〈さんこく〉)の編纂者の一人。「三国」とはどのような辞書なのか、「三国」の第7版がどのようにつくられるのかを解説していきます。
「三国」の二大編集方針は「実例に基づいた項目を立てる(実例主義)」「中学生にでも分かる説明を心がける」ですが、とりわけ実例主義――広がりと一過性ではない定着をもった「今そこにある日本語」を載せる――に則してことばを集める様子がとても面白く描かれています。
例えば、用例を見つけるために町を歩きながら看板や立て札などを撮影。下北沢から三軒茶屋まで、ぶらぶらしながら40~50枚ほどパシャパシャ。青果店の値札「やわらかキャ別」、タレントの生写真を売る店の「K-POPガチャぽんあります!」など、怪しい人(もしくはスパイ!?)に間違われないように気を配りながら撮りためます。
採集の対象は、新聞・雑誌・書籍・ウェブページ・ツイッター・メールの文面など媒体を問いません。文字情報だけでなく、音声情報からも採集します。テレビ・ラジオ・CD・DVD・ネットの動画サイトはもちろん、町なかでの会話にも耳をそばだてます。テレビはいつ何時、出演者の口から重要なことばが漏れるか分からないため録画が基本です。
このように数名の編纂者で採集した膨大な数のことばをリストアップし、議論を重ね、新規掲載する分に絞っていきます(約4000語となったそうです)。語釈を書き起こし、既存の手入れを校了まで続けて、ようやく改訂作業が終了となります。
「三国」第7版は2013年末に刊行される予定で、今はまだ編纂作業の真っ最中。今日も明日も明後日も、ことばとの格闘は続いているはずです。(S)