2011年4月号
デッドゾーン 放射線と放射性物質と放射能
大津波とともに今回の震災をより深刻なものにしているのが原子力発電所の事故。被災から一月以上が経過した現在も、解決の目処は立たず、むしろ周辺地域の苦しみは増すばかりです。一刻も早い事態収束を願ってやみません。
さて、その元凶ですが、原子炉からの放射能漏れであることは言わずもがな。新聞・テレビ・インターネットでは、その影響について様々な情報が飛び交っていますが、そこに出てくる「放射線」「放射性物質」「放射能」の意味については、正しく理解されていないこともあるようです。校正する際にも大切なことですので、ここで取り上げておきましょう。
これらの言葉を理解するのにもっとも分かりやすいのが、放射線をホタルの光にたとえる方法でしょう。詳しくは、文末に記したサイトにアクセスしていただくことをお勧めしますが、簡単に言うと、ホタルを「放射性物質」とするならば、ホタルが放つ光が「放射線」で、ホタルの光を出す能力が「放射能」ということ。ただ、放射性物質を単に「放射能」と呼ぶ場合もあるというから注意が必要です。
もうひとつ、原発報道でよく出てくるのが「ベクレル」「シーベルト」。今回の事故で初めて耳にしたという人もいるのでは? 「ベクレル」は放射能の強さを示して、食品などに含まれる放射性物質の量をはかるときに。一方の「シーベルト」は放射線の量を示し、人体にどれくらいの影響があるかを見る場合に使われる単位です。基本的なことは押さえておくようにしましょう(「ニュースがわからん!」朝日新聞2011.4.15参照[会員のみ閲覧可能です])。
http://www.atomin.go.jp/reference/radiation/familiarity/index02.html
この一冊!『日本語の将来』
『日本語の将来』
日本語の将来
梅棹忠夫 編著
NHK出版(2004/6)
320ページ/B6判
ISBN 978-4-14-091001-6
1,218円(税込)
編著者の梅棹忠夫氏は漢字廃止を訴えつづけてきたわが国屈指の民族学者(2010年7月死去)。「漢字をなくす」なんて、荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、漢字廃止論は実は幕末以来の歴史がある。
その議論も細かく見ればさまざまなバリエーションがあるのだが、それらの主張を大雑把に括るなら、漢字の字体の煩雑さが文化の発展や情報のスムーズな伝達を阻んでいる、ということ。本書では、そのために「漢字かなまじり」という千年の伝統を持つ書き方をローマ字書きに改めることで、国際化時代の脱落者とならないようにしようと説く。
英語の授業が小学校で始まり、英語を社内の公用語にする日本企業も出てきた現状を見るにつけ、日本語は本書の刊行当時(2004年)以上に激しく揺さぶられている。
3.11震災後、日本の国の形が大きく変わろうとしているいま、我々の母語である日本語の将来の姿を、冷静に見つめてみるのもいいかもしれない。(Y)