2012年3月号
デッドゾーン 意味が通じて キケンです
《こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。この ぶんょしう は にんんげは もじ をにしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という》例文です。
(日本ハグ協会ブログより引用)
――いかがでしたか。案外すらすら読めたのではないでしょうか? これが今月の「デッドゾーン」。個人的に5段階で「危険度4」くらいでしょうか? 特急の仕事で、一字一字エンピツを当てている時間がないときなど、うっかり読み飛ばしてしまいそう。要注意ですね。
冒頭の例文の形はもともと英語圏で作られたようなのですが、日本語の場合には、ひらがなとカタカナに注意する必要がありそうです。外来語とか、昨年9月25日号のアボカドやシミュレーションも、この仲間に入れてもよさそう。
なかなか面白いので、私も例文を作ってみました。
《さんがつ に なりしまた。 きかたぜが つよく ふく、 はる とは なかばりの ひに なるのか、 あたかたな みかみなぜ が ふく すごやしすい ひと なるので しうょか? ――どでうすか? めくゃちちゃ でも ちゃんと よめしまたか?》
やってみると案外難しい…仕組みがわかれば例文を作れるというものでもないのですね(仕事も同じですよね…)。
例文を読み、自分でも作ってみた実感として、音の列が同じだとつい読み飛ばすということ。ア列ならアカサタナハマヤラワ、ですね。あとは長めのことばの中央が入れ替わっている場合。前後が正しいだけにうっかりしそうです。
皆さんもぜひ、例文づくりにチャレンジしてみてください。見落としの傾向もつかめ、想像以上に楽しめますよ。(S)
「日本ハグ協会」ブログ
この一冊!『レシピの書き方 料理のおいしさがきちんと伝わる』
『レシピの書き方 料理のおいしさがきちんと伝わる』
レシピの書き方 料理のおいしさがきちんと伝わる
レシピ校正者の会 編
実業之日本社(2010/4)
176ページ/A5判
ISBN 978-4-40-842032-5
1,470円(税込)
女性誌や実用誌で日々目にするおいしそうなレシピ。本書は10万点以上ものレシピを校正してきたベテラン校正者による「レシピの書き方」の本です。
読者対象は書く側の人、一般の料理ブロガーやプロの料理講師まで幅広いのですが、我ら校正者にも非常にお役立ち、なのです!
料理が苦手な人でもわかるように、どの食材はどう扱って、こうして料理して……と手取り足取り教えてくれるような本です。普通の料理の本とはまた違った丁寧さ、説明の良さがあるのです。そこが、校正者側にも使える点なのです。
レシピでよく見かける特有の言い回しがありますよね。それらの意味をわかりやすく、調理の流れにのせて説明してくれます。その他、野菜の切り方、食材の下ごしらえ方法、旬の時季、複数の書き方がある食材のリスト(パスタやハーブの呼び名等々)、調理関連の紛らわしい言葉(適量・適宜、切り目・切れ目等々)…これらが一冊にまとまっているのですから、使わない手はありません!
校正をしていて、意味の通らない文章が出てくることがありますが、そうした際のエンピツの出し方を知るのにも便利です。代案に使えそうな言い回しもあちらこちらに見つけることができるでしょう。
わかりやすくていいな、と思ったのは、見開きで左にレシピ例、右にチェックリストが用意され、左のレシピを校正する際にどんな点に注意すればよいかが整理されているところです。レシピ校正の初心者には心強い味方となるのではないでしょうか。
辞書ではありませんが、巻末に索引があるので、困ったときに「引いて」使うこともできます。
あと、「校正者のこぼれ話」が◎。ふだんの実務を思いながら「うんうん、そうよね」といいつつベテランの知識や考えまで盗めてしまう、おいしいコラムです。
うまみたっぷりの本書、ぜひ手にとって見てください。