2012年8月号
デッドゾーン 文房具のチェック
節電の夏。いかがお過ごしですか。
こう毎日暑いと、つい机の上にアイスコーヒーなど冷たい飲み物を置いた状態で仕事をしがちですが、うっかりグラスを倒しそうになっていませんか?
冷房を控えめにすることで汗をかいて、ゲラが染みたりふやけたり……ということはありませんか?
――真夏日に猛暑日と、熱中症にご用心ですが、自分だけでなくゲラの状態にも気を配ることが大切です。
ということで、今月は「文房具のチェック」について。
校正でふだん使用している文房具を見てみましょう。
今お使いのエンピツやシャープペンシルの芯。濃さはいくつでしょう。筆圧の問題もあると思いますが、消しゴムできれいに消えるくらいの濃さでしょうか? 消したあとが残るような場合は芯の濃さを見直してみましょう。
消しゴムはちゃんと字が消えるものを使っていますか? 古くなった消しゴムを使っている方。古くなった消しゴムは、エンピツのあとを「のばして」しまいがち。消すつもりで、こすった字が黒くのびてしまったことはありませんか? 消しゴムの「鮮度」にも注意が必要です。
続いて赤ペンを含めたペン類です。たまに、筆記中にペン先のインクがダマになるものがありますね。うっかりこすってゲラを汚してしまっては、せっかく完璧な校正をしても、ゲラを受け取る側の印象を下げてしまいかねません。
最近のボールペンは、水性・油性を問わずインクや構造が改良されたのか、あまりこのようなケースは見られませんが、ペン先が太めのものは、要注意です。
文房具店でよさそうな新製品が出ていたら、ぜひ試してみることをおすすめします。ペン1本、消しゴム1つで仕事の能率も上がるし、ゲラの見ためもぐんとよくなります。なかなか侮れないんですよ、文房具。(M)
この一冊!『気持ちにそぐう言葉たち』
『気持ちにそぐう言葉たち』
気持ちにそぐう言葉たち
金田一 秀穂 著
清流出版(2009/4)
174ページ/四六判
ISBN 978-4-86029-290-4
1,050円(税込)
本書は、テレビ番組「世界一受けたい授業」でお馴染みの金田一秀穂氏が擬音語・擬態語について書いたエッセイ集です。
取り上げられた語はバラエティに富んでいます。「のびのび のんびり」「しとしと しっとり」「さくさく さっくり」「ちょきちょき ちょっきん」「つるつる ぴちんっ」「ちんじゃら じゃらじゃら」「ほやほや ほかほか」等々。
その「ほやほや ほかほか」。出来たてのほやほやであったり、新婚ほやほやであったりするのですが、歴史的な変化を調べると、13世紀頃には、果物が熟して柔らかくなったことを表す意味で使用されていたとか。「瓜がほやほや」。ついで16世紀には暖かで気持ちがいいという意味になります。「春風がほやほやと吹く」。17世紀になると、陽炎や湯気が立ち上る様子に使われます。「ほやほやとどんどほこらす雲ちぎれ」という俳句があるそう。どの「ほやほや」もどことなくかわいらしく、柔らかく温かそうで気持ちがいい。
著者が「ほやほや」がふさわしいと考えているのが「温泉饅頭」! 出来たてのほやほやを頬張るときの幸せな気持ち。いいですね~。饅頭のほか、「赤ん坊はほやほやだと思ってしまう」そうですが、私の周辺からは「ほかほかの肉まんだよ~」という声も。「ほやほや」と「ほかほか」、どちらもいい線いってますよね。
「しとしと しっとり」もなかなかのものです。以下引用。「しとしとの国である日本人は、なぜか湿っている。これに気づいたのはニューヨークでのことだった。街角で、向こうから歩いてくる人の国籍がわからない。(中略)でも、日本人はすぐにわかる。なぜか、濡れているのだ。(中略)きっと私たち日本人は、身体から水分を分泌し続けているのではなかろうか。」
思わず微笑んでしまいませんか?
――愉快でのんきでためになる、金田一ワールドでほっこりしてください。(S)